東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)79号 判決
ところで、本件選挙が昭和四六年四月一一日に執行されたことは明らかであり(臨時特例法第一条参照)、原告がその主張の頃以来東京都足立区興野町三七〇番地に居住し昭和四六年三月一五日同所から埼玉県草加市松原二丁目五番四〇二号―現在所―に住所を移転したことは、当事者間に争いがないが、原告は臨時特例法第一条、特例政令第三条―これにより本件選挙における選挙人名簿の登録基準日が昭和四六年三月一五日(被登録資格のうち選挙人の年令については選挙の期日)と定められた―、法第九条第二項、附則第一三項、第一五項、地方自治法第一八条―その「別に法律の定めるところにより」とあるを指摘する―等を挙げて本件選挙における選挙人たるの住所要件は右昭和四六年三月一五日を基準として算定すべきものであり原告はこの要件に欠くるところはない旨極力主張し、なお、法第四三条によつて「選挙の当日」「投票することができない」「選挙権を有しない者」とは、法第一一条に定める欠格者以外にはこれに当るものはないなどとるる主張する。しかしながら、選挙人名簿の登録は選挙権行使の形式的要件(しかも原則的要件)であり(法第四二条第一項)―特例政令第三条はこれに関する。―これと選挙権の実体的要件(法第九条、第一一条、第四三条)とは、峻別して考えられるべきことはいうをまたず、(法第四二条第二項、第二七条、第二八条)特例政令第三条をもつて原告のいうように本件選挙における選挙権の実体的要件である住所要件算定(逆算)の基準日をも定めるものということはできない。原告の主張は選挙権の実体的要件を正解せず、これと、選挙権行使の形式的要件のために設けられる選挙人名簿の登録に関する規定とを彼此混淆して法解釈の誤りを招来したものか、あるいは牽強附会による独自の見解をなすものというほかなく、とうてい左袒することはできない。
そうすると、原告は、本件選挙の期日たる昭和四六年四月一一日現在、東京都足立区に引き続き住所を有していないことは明らかであり、したがつて、原告は、法第九条第二項に定める住所要件を充足しないのであるから、本件選挙における選挙権を有しないものというべきである。
(久利 三和田 栗山)